韓 亜由美 さん率いるステュディオハンデザインが、トータルデザインとディレクションを手がけた、UR朝霞浜崎のバリューアップ計画へ!
韓 亜由美 さん率いるステュディオハンデザインが、トータルデザインとディレクションを手がけた、UR朝霞浜崎のバリューアップ計画。築34年の団地の、外構や共用部分などのリデザインを、975戸の住民が住まい、いつも通り暮らす中で施工(!)した。工期は10ヶ月。
韓さんといえば、なんといっても「工事中景」。建物や土木の工事中の風景からデザインの鼓動が始まります。以下はURによる、このプロジェクトの紹介サイト。まずは、この中の短い動画をご覧ください。
私はこれを見て、感極まりました…!
http://www.ur-net.go.jp/akiya/saitama/value_up/asakahamasaki/
記録、映像制作は加藤貴文さん。
「団地は森」のコンセプトに基づき、建物の表層には、さまざまな動植物が描かれた。イラストレーションは黒田潔さんによるもの。
14階それぞれに別のイラストで、一番下の階は木の根やアンモナイトといった地層、そこから階が上がるにつれ、現れる動植物たちも変化し、最上階では鳥が描かれている。また色も塗り分けられ、トータルでグラデーションとなっている。奇数階には、その色から思わせる言葉が書かれた。
サイン計画はneucitoraの刈谷悠三さん
都心に30分程度で到着できる利便性と、近隣に残された森、ふたつのイメージ「URBAN FOREST」が表現された。
内廊下側には白い玉砂利を敷き光を集め、さまざまなフェンスも白いレースものやガラスに変えられるなど、暗くなりがちだった部分に明るさがもたらされた。家賃は据え置き。バリューアップすることで空室を防ぐと同時に、きれいにマナーよく使うようアフォーダンスされることが考えられる。
管理組合など住民側のコミュニティが充分に整っておらず、工事は合意形成や意見交換などはほとんどないまま始められた。そこが韓さんは「課題」と仰っていたが、なにせ975戸という巨大な規模。「仕上がればわかってもらえる。デザインにはそのちからがあることを、私は経験上、感じている」と語っていた韓さん。敢えてそのままプロジェクトを進める、韓さんの覚悟をともなった強さのほうに、私はすっかり感心した。
韓さんの仕事を見て、たかが表層、と言えるだろうか。今回のような団地では、住民にとっての駆体の表層は、自分ちの内とも外とも言えない、独特の距離感があるだろう。そこにデザインという息吹がふきこまれることは、生活の価値そのものも「バリューアップ」することに、つながるのではないだろうか。
ステュディオハンデザインのサイトはこちら
http://www.studio-han-design.com/
韓さんの仕事をまとめた本「工事中景 ケンセツゲンバのデザイン」はこちら
http://www.amazon.co.jp/dp/4306044637/ref=cm_sw_r_tw_dp_r0Emtb08045XE
田中元子(たなか・もとこ)