mosaki | TOKYOTOKYOTOKYO!!!

大好きな東京から発信する建築系クリエイティブユニットmosaki(田中元子+大西正紀)のブログ

建物も景観も全部全部、生きている。どう生きるか、どう死ぬかなんだ。

建物や景観を残したい、という話をよくする自分であることを前提に、敢えて言いたい。現実、残らなかったから、未来永劫続くものなんてないんだ、諸行無常なんだって、思い知らされたって部分は、正直、ある。

 

あるとき地元に帰ってみたら、

 

子どもの頃、よく使っていた小さな自販機が、もうとっくに使われなくなっていて、紫外線にさらされて色を失い、朽ち果てた状態で、ただその場に残されていた。何年も前の話だけど、この光景がなぜか、いまだに忘れられない。うれしくも、悲しくもなかった。こういうものだよな、って思った。自販機の死骸を見つめながら、私は乾いた気持ちで納得していた。

 

ずっと続く会社も、ずっと続く権力も、ないと思ってる。既得権益とか、名誉職とか、握りしめて手放さない、後世に譲らない感覚を、私はほんとに、信じられないって思ってる。それってやっぱり、昔の人に比べて、つまりそーいうものを握りしめがちな世代に比べて、現実の光景がどんどん塗り替えられた時代に、生まれ育ったからじゃないだろうか?もしそんな、育った時代の周辺環境が、少なからず価値観に影響するとしたら、「在り続けること」に執着するか、そうでないかという感覚を、世代を超えてシェアするのは、難しいことなのかも知れない。

 

建物も景観も全部全部、生きている。存在するか消えるか、ということが問題じゃないんだ。どう生きるか、どう死ぬかなんだ。放っておいても健康的に生き延び続けるものなんて、何もない。漫然と在り続けることが善であることは、あり得ない。在ったって、もはや生きているとは言えなくなってしまうことだって、あるんだ。田舎の片隅の、自販機みたいにさ。

 

田中元子(たなか・もとこ)